齋藤力

"オーダーの難しさ"についてDORSOが思うこと

お客様との会話の中で最も多くいただくご質問やご相談をご紹介致します。

オーダーもしくはオーダーメイドで仕立てた洋服と既製品の洋服の違い
オーダースーツを扱っている店ごとの違いは何なのか
オーダーした洋服の着心地が必ず自分に合うのか
オーダーした洋服がイメージ通りに仕上がるのか
自分自身に合う洋服が分からない
生地を見ていても仕上がりのイメージができないからオーダーは難しい
オーダーに興味はあるが、自分に何が合っているのか判断できないから一歩を踏み出せない

お客様ひとりひとりがオーダーに対して抱かれる期待・不安・疑問はそれぞれかと思いますので、今回のブログでは、"⑥生地を見ていても仕上がりのイメージができないからオーダーは難しい"をDORSOなりに考えていきます。

オーダーでスーツ・ジャケット・コートを仕立てる際の生地選び。
何度かオーダーで洋服を仕立てた経験がある方や既製品で色々な洋服を着てこられた経験がある方でしたら今までの経験や既にお手持ちの洋服と比較をしながら生地選びをすることでオーダーのイメージを高めることが可能ですが、オーダーが初めての方やスーツやジャケットの着用頻度が低い方にとっては実物の生地や小さい生地のサンプル(バンチ)を見ていても実際に洋服に仕上がるイメージをはっきりと持つことは難しいかもしれません。

特に難しいと感じられる3つのこと

オーダーの生地選びの際に特に難しく感じられるのは、イメージが必要とされる以下の3つではないでしょうか。
①洋服になる前の生地・小さい生地見本(バンチ)で見ている色と洋服に仕上がった時の色の濃淡の差による印象の違いについて。
②無地の生地の場合は心配ないのですが、チェック柄やストライプ柄の場合に、生地状態での柄のサイズ感や印象が洋服に仕上がった時にどのような全体像・バランスになるのかについて。
③生地の状態での手触り・素材感が、洋服に仕上がった時にどのような着用感になるのかについて。

①洋服になる前の生地・小さい生地見本(バンチ)で見ている色と洋服に仕上がった時の色の濃淡の差による印象の違いについて。

例えばビジネスシーンで着用頻度の高いネイビーやグレーのスーツ、慣れ親しんでいる色ではあるのですが生地見本の中には多くのネイビーやグレーが含まれており、生地メーカー各社が必ずコレクションしている色となります。
ネイビーやグレーのスーツ生地をひとつ選ぶ際にも、メーカーによって違いがあるので色の出し方や光沢感を見比べてみると面白いと思います。
生地の色の濃淡について一点お伝えできることは、ネイビーやグレーのようなベーシックな色にだけ言えることではないのですが、生地見本で見ている色と仕上がりの色の印象についての差は、生地見本よりも仕上がりの方が色が明るく見えることが多いです。
つまり、同じ生地でも小さい面積で見ている方が生地の色が濃く見えて、生地の面積が大きくなるにつれて生地の色は明るく見えるのです。

あくまで色の濃淡に関してですが、生地選びの際に皆様の理想の色の濃淡を探す時は仕上がりは生地見本よりも少しだけ明るくなることをイメージして選ばれると良いと思います。
お手持ちのスーツと比較して生地の色を決めたい場合は、そのスーツをテーラーやショップに持参して生地見本と色を見比べてみると分かり易いと思います。
生地見本では、「少し濃すぎるかなぁ」と感じていても比較してみると実はちょうど良いという場合も多いと思います。

②無地の生地の場合は心配ないのですが、チェック柄やストライプ柄の場合に、生地状態での柄のサイズ感や印象が洋服に仕上がった時にどのような全体像・バランスになるのかについて。

ストライプ柄の場合は、ストライプの線の太さ・ストライプの幅・ストライプとベースの色のコントラストが仕上がりの印象を左右します。
チェック柄の場合は、チェックのタテヨコのバランス・チェック自体の大きさ・チェックの視認性が仕上がりの印象を左右します。

柄物の生地をサンプルで見ていても仕上がった時にどれくらいの印象になるか明確にイメージをするのは難しいのですが、今まで着てこられた経験がある柄物の洋服を基にオーダーに期待しているイメージ・理想とするイメージが雑誌やSNSにある場合はそのイメージ画像をオーダー時にテーラーやスタッフの方と共有しながら生地選びをされると良いと思います。
仕上がりの全体像をイメージをしながら、逆算して生地状態で柄のサイズを把握する必要があるのでプロとのイメージ共有は大切となります。

③生地の状態での手触り・素材感が、洋服に仕上がった時にどのような着用感になるのかについて。

①と②の難しさは見た目の印象についてですが、③については素材感による季節感・着心地のイメージとなります。
素材感について重要な点は、繊維の種類・生地の重量・生地の織り方・生地の艶感などが仕上がりの印象と着用感を左右します。

いろいろな種類の生地でオーダーをした経験がある方でしたら経験値から生地を見て触れるだけで前述した点について把握することができるかと思いますが、一般的には一目で生地の特徴を把握するのは非常に難しいと思います。
②の時と同様に、生地が持つ性質について理解して仕上がりをイメージするには経験が必要になり、オーダー時にリクエストをプロに伝えて生地選びをされることをお勧めします。

ここからは、DORSOにお越しいただいたお客様の生地選びの一部をご紹介させていただきます。

ウールにシルクとリネンをブレンドした夏用のジャケット生地です。
爽やかさと軽やかさが特徴で、湿度の高い日本の夏場でも比較的快適に着用していただけます。

カシミアにシルクとリネンをブレンドした夏用ジャケット生地。
数ある夏用ジャケット生地の中でも最軽量のひとつ、カシミアを得意とするピアチェンツァらしい上質感のある組み合わせが最大の魅力です。

ウールにカシミアをブレンドした冬用ジャケット生地。
冬らしさがある起毛素材です、カシミア10%とは思えないほどの風合い・肌触りの良さは仕立て上がった後で感じることができる魅力です。

DORSOオーダーフェアでご用意したウール&リネンのジャケット生地。
英国製の夏用ジャケット生地、日本の夏の暑さでは屋外着用に厳しい品質ですが、秋と春には快適に着ていただける品質です。

こちらもDORSOオーダーフェアでご用意したウール&リネンのジャケット生地。
ブルーとネイビーのハウンドトゥース、柄のサイズ感がどのような印象になるかについてイメージを共有させていただきました。
スーツでお薦めする一般的なハウンドトゥースと比較すると大きな柄ですが、ジャケットに仕上がるとちょうど良いバランスのサイズ感です。

ネイビー無地の比較。
着るシーン・着る季節・ネイビースーツに求める印象をお聞きした上でネイビー無地を数点ピックアップしてご覧いただきました。
同じ条件でお探ししておりますが、全て異なる仕上がりとなり印象は違ってきます。
このような微妙な違いについてイメージを共有して、お客様にとっての最適解を導き出すためのお手伝いをさせていただきます。

カシミアのコート生地をお薦めしているワンシーン。
どれもカシミア100%なのですが、ウエイト・表面の仕上げ・色味・ブランド全てが異なります。
実際に着用していただくシーンをイメージしながら、微妙な色の違いや質感の違いを吟味していただきます。

今回は"オーダーの難しさ"について、DORSOなりの考えを記事にさせていただきました。
今回の題材にさせていただいた"オーダーの難しさ"、テーラー・フィッター・販売員として経験を積んだ私の視点からすると"オーダーの難しさ"こそ"オーダーの楽しさ"だと思っております。
オーダー時に仕上がりを確認できないという不安が無くなることはないのですが、信頼ができるプロと話し合いをしながら生地選びをし、ご自身のオーダーについてのイメージを共有してオーダー主の為だけに仕立てられる洋服、一着の洋服が仕上がるまでの全ての過程がオーダーならではの難しさであり、同時にオーダー以外では体験することができない特別な楽しさだと私は思っております。
お客様にとってオーダーの体験が素晴らしいものとなるために、プロとしてお客様の不安をできる限り解消し、お客様の期待を上回る洋服作りを目指して、DORSOは日々ひとつひとつのオーダー・仕立て・生地と向き合いクオリティー向上のために尽力いたします。

齋藤力

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