齋藤力

私が選んだ "ドブクロス" のスリーピーススーツ

"Why I ordered"
Why I orderedでは私が自分のために仕立てた洋服について、なぜこの生地を選んだのか、何を考えて仕立てたのか、完成した洋服の着想感はどうなのか、どんな着方をするのか、私なりの考えを記事にさせていただきます。
是非ご覧くださいませ。

私が自分用にオーダースーツやオーダージャケット、オーダーコートを仕立てる際の生地選びは、基本的には世界中の生地屋さんが毎シーズン発表している新作コレクションの中から自分の好みの生地を楽しみながら選んでおります。
但し今回は新作コレクションからではなく、何年も前から私にとって憧れだった"DOBCROSS (ドブクロス)"を自分用のスーツ生地に選びました。

ドブクロスとは

John Cooper & Son (ジョンクーパー&サン)の"ドブクロス"。
ドブクロスとは私がテーラーになることを目指してイタリアに仕立ての勉強をしに行った際に初めて出会いました。
私がお世話になったサルトリア(テーラー)ではドブクロスと同クオリティーの生地を頻繁に目にする機会があり、何度も見ているうちにこの生地はどんな生地なのだろうと気になっておりました。
当時の私は経験も生地についての知識もほとんどなかったので、この生地の魅力や価値を理解することはできていなかったのですが、生地の状態からスーツに仕上がる過程の一部始終を見て、仕上がったスーツが放つ美しさに感銘を受けたことを今でもはっきりと覚えております。

その時から約15年間、ドブクロスは私にとって思い入れが強い生地のひとつであり憧れの存在でした。
ドブクロスとは昔ながらの低速織機の機械名であり、発明された村名"Dobcross"が由来となっております。
現在稼働しているこの織機は世界に数台のみで、それらのドブクロス織機は全て"ホーランド&シェリー"社が所有しており、ドブクロス織機を使用して生地を生産しているのは"ホーランド&シェリー"と合併した"ジョンクーパー"が立ち上げた"ドブクロス・ウィービング カンパニー"のみで世界で唯一のドブクロスの織元となります。
昔ながらのドブクロス機械で織られる生地の風合いは格別であり、加えて希少性の高さも魅力のひとつであることは明白なのですが、ドブクロスが持つ魅力は織機以外にもあると私は思っております。

その魅力とは糸の品質の高さです。
ドブクロスは"SUPER 140's WOOL 98% & CASHMERE 1% & MINK 1%"という高品質かつ唯一無二の糸で織られております。
この特別な糸を利用してドブクロス織機で通常よりもじっくりと織られることで生まれる生地の質感が世界中のテーラーを魅了してきました。

ドブクロスのウエイトは340g/m、日本の気候では10月~4月頃までは気持ち良く着ることができる生地感です。
生地の表面はクリアなので繊細そうに見えると思いますが、実際に生地に触れてみると適度な厚みがあり、弾力性・ハリコシをしっかりと感じることができます。

ドブクロス裁断

ずっと憧れていた生地、どんな仕上がりになるのか、期待に胸を膨らませながら鋏を入れました。

鋏を入れた時の感触は生地によってすべて異なります。
薄い生地もあれば分厚い生地もあるので当然なのですが、ドブクロスを切る時の感触は似たクオリティー・似たウエイトと全く違い、ドブクロス独自の弾力性を感じます。
これは感覚的なことであり理由ははっきりと分からないのですがドブクロスに鋏を入れる度に感じるので、糸の品質や織の密度が関係しているのではないかと思います。

スリーピーススーツ完成

ドブクロスのチャコールグレーで仕立てたスリーピーススーツが完成しました。

緩やかなカーブのゴージーライン。

スリーピースを仕立てる際には、ジャケットのVゾーンとベストのバランスが重要です。

立体感のある美しいラペルのロール。

ボタンは水牛の黒を選びました。

オーソドックスなチャコールグレーの無地ですが、生地のオーラとでも言うのか、何とも言えない雰囲気、そこはかとない美しさがドブクロスの魅力です。

コーディネート

仕上がったスリーピーススーツを着てみました。
ネイビーの小紋柄ネクタイとサックスブルーのシャツを合わせたコーディネート。

生地の弾力、動きに伴うドレープの美しさ、気分が高まる質感です。

鮮やかな色使いのネクタイとグレーのシャツのコーディネート。

今回は、私の憧れ"ドブクロス"で仕立てたスリーピーススーツについて記事を書かせていただきました。
"ドブクロス" は、僅か6色での展開となりますが、DORSOの店舗やトランクショーでご用意致しております。
店舗では仕立て上がった私のスリーピーススーツもご覧いただけますので、ご興味をお持ちいただけましたら是非実物をご覧くださいませ。
どんな生地にも同じことが言えるのですが、生地は実際に触れてみないとその生地が持つ本質や魅力を感じることができないと思っております。
ご自身の手で感触を確かめて、目で見てイメージを高めることが皆様のオーダーの満足度を高めることに繋がりますので、是非実物の生地を手に取ってご覧くださいませ。
生地や仕立てに関するご質問やご相談を喜んで受けさせていただきますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡くださいませ。

齋藤力

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