齋藤力

H.LESSER SONSの"LUMB'S GOLDEN BALE"で仕立てるグレンチェックジャケット

グレンチェックジャケット

PROCESS OF ORDERING
お客様から頂戴したオーダーアイテムの素材選びから仕上がりまでの過程について、"H.LESSER & SONS (H.レッサー&サンズ)"の"LUMB'S GOLDEN BALE (ラムズ・ゴールデンベール)"でオーダーを頂戴したジャケットを一例にご説明をさせていただきます。
DORSOでMTMのジャケットをオーダーいただいた場合のご注文からご納品までの流れ、お客様からのご要望やこだわり、私自身が洋服作りに対して大切にしていることについて触れていきます。

生地選び

今回ご紹介するジャケットはDORSOで5着目のオーダーとなるリピーターのお客様からいただいたMTMのご注文です。
今まではビジネス用の秋冬用と春夏用スーツ、春夏用ジャケットのオーダーをしていただいており、全てのオーダー時にお客様のイメージされる着用時期と既にお手持ちのワードローブをお聞きした上で新たに加える洋服として最適と思える生地をご提案して仕立てさせていただいておりました。
今回のオーダーはInstagramを通じてイメージの写真を共有していただき生地探しをさせていただきました。

共有していただいたイメージ写真と全く同じ生地をH.LESSER & SONS (通称 H.レッサー)のLUMB'S GOLDEN BALE (通称 ゴールデンベール)コレクションで見つけることができたので、その生地が今回のオーダーの第1候補となりました。
ただし今回のオーダーの本来のコンセプトは"夏に適したジャケット"ということを事前にお聞きしており、H.レッサーのゴールデンベールは生地のウエイトが320gあるので日本の夏に適したクオリティーとしてお薦めできないというところが生地選びのポイントとなりました。
そこで、H.レッサーのゴールデンベールのグレンチェックに似た生地で夏向きのクオリティーの生地を私が数点ピックアップをしてお客様にご覧いただきました。

お客様に生地選びをしていただく際に、季節・色・柄・品質・生地の生産国・生地のブランド・プライスなど色々な要素についての情報をお伝えさせていただき、それぞれの素材の仕上がりのイメージや素材の特性と魅力についてご説明をしながら実際に生地を手に取って比較していただきます。
今回は、お客様が魅力を感じた色・柄を優先するべきか、着用イメージに適した季節感を優先するべきかについてご検討していただいたのですが、最終的には理想的なグレンチェックである柄の魅力を優先してH.レッサーのゴールデンベールでオーダーを頂戴致しました。

実物生地

今回オーダーを頂戴しましたH.レッサーのゴールデンベールコレクションに含まれるこちらのグレンチェックは既に生産が終了しており、オーダーを頂戴したお客様に現物生地をご覧いただく為に生地を仕入れようと思いH.レッサーの在庫量を確認したところ、在庫の残りが僅かであった為にお客様に使わせていただくジャケット分以外にも残りの在庫全てを仕入れて"DORSO STOCK COLLECTION"に加えました。

私がこちらの生地を仕入れた理由は、
①"LUMB'S GOLDEN BALE(ラムズゴールデンベール)の品質の高さ"
LUMB'S GOLDEN BALE(ラムズゴールデンベール)とは、最高品質と認められた原毛を厳選して織られた特別な生地の名称であり、我々テーラーが扱える生地は何万種類もある中でもゴールデンベールは世界から名品と認められた由緒正しい生地であり、現在では希少性が高く、テーラーにとって憧れの生地の一つです。

②"ジャケット素材では珍しいウール100%の320gというクオリティー"
ジャケット素材は世界中の生地ブランドから展開されているのですが、ウール100%の320gのクオリティーは実は珍しいクオリティーと言えます。日本の気候に於いて、合い物として最も長いシーズン着用可能にする生地の重さ・表情・質感を兼ね備えているところが魅力的です。

③"美しい色味・配色でバランスが整ったグレンチェック"
先ずベースになっている茶系の色味が美しいです。そこに施されるグレンチェックの配色と柄のタテヨコ比率のバランスの良さがこの生地の最大の魅力です。
以上の3点に惹かれてH.レッサーの本国の在庫を入手致しました。

"DORSO STOCK COLLECTION"とは、DORSOが現物生地を仕入れて在庫しているコレクションとなります。
バンチコレクションにも素晴らしい生地が多い中で敢えてDORSOが生地をコレクションする基準は、
①ヴィンテージ生地の一点物
②廃盤生地で今後入手ができなくなる物
③珍しい品質の生地でバンチにそもそも含まれていない物
④現行バンチコレクションに含まれているが、敢えて現物で仕入れてご覧いただきたい品質の物
これら①~④の現物生地を厳選して仕入れることでお客様へのより良いご提案を目指しております。

今回の生地は②に当てはまり、このようなグレンチェック柄とは今後出会えない可能性が高いと思い、在庫もほんの僅かだったこともあり思い切ってストックに加えました。

フィッティングチェックについて

上の写真は以前オーダーをいただき仕立てさせていただいたジャケット、こちらの3者混素材ジャケットのデータをベースにして今回のジャケットの設計をさせていただきました。

こちらのジャケットを仕立てさせていただいた時と今回のジャケットオーダー時ではお客様のご体型に変化がありましたので、ご体型変化により生じた調整と今回のジャケットにお客様が求める印象についてのご要望をお聞きした上で再設計をして仕立てさせていただきました。

ジャケット完成

オーダーをいただいていたH.レッサーのゴールデンベールで仕立てたジャケットが完成致しました。

今回のお客様には今まで仕立てさせていただいたスーツの着心地を気に入っていただいていたので、"DORSOハイクオリティーオプション"をお薦めさせていただき
・肩イセ増量仕立て
・袖イセ増量仕立て
・本衿かけ仕立て
・ゴージーラインカーブ仕立て
・衿穴(フラワーホール)手かがり仕立て
これらのハイクオリティーオプションを採用した仕立てをお選びいただきました。

クラシックなデザインやディテールについて熟知された上でご自身のスタイルを築かれているお客様の定番"チェンジポケット付きの腰ポケット"と"袖釦5個やや重ね付け"。

ご納品

仕上がったジャケットを着用していただき、最終のフィッティングチェックをさせていただきました。

今回で5着目のご納品となるのですが、当然ながら全て素材が変わりますので仕立てる際に生地に対して考慮すべきポイントも異なってきます。
今回は前回のジャケットから型紙上で調整を加えた箇所がいくつかあるのですが、生地の特性を考慮した細かいポイントや調整の方法についてはお客様が私に委ねてくださっているので最終フィッテイング時に調整を加えたポイントをチェックしてご納品をさせていただきます。

お客様からご要望をいただいた今回の調整点は、今まで仕立てさせていただいた中で最もはっきりとした柄かつ今までにない色味の生地ということを考慮して柄と色を活かして身体にフィットするシェイプ・バランスを実現することでした。

今回の設計で私が注力したポイントは、前身頃と後ろ身頃のバランスを少し変えて調整することでお客様のイメージされる印象に近づけれるように工夫致しました。

仕上がったジャケットを着ていただいた瞬間、お客様の身体に自然にすっと馴染んだジャケットを見てお客様からのご期待にお応えできたことを実感できました。

今回のブログでは、H.レッサーのゴールデンベールで仕立てさせていただいたグレンチェックのジャケットのオーダーについてご紹介をさせていただきました。

DORSOでのオーダーは、お客様との対話から全ては始まり、お客様それぞれの理想を模索し、最適と思えるスーツやジャケットを作り上げていくために必要な採寸・フィッティングチェックを経て一つ一つを丁寧に仕立てさせていただきます。そして仕上がった洋服をお客様の生活の中で着ていただき、実際の動きに伴う着用感やバランス・仕様(裏地やポケット)・コーディネートについて感じられたことはできる限り共有させていただき、お客様の理想を把握し、お客様の生活に心地良さを与えることができる洋服作りを目指したいと思っております。

初めてのオーダーのお客様もリピーターのお客様も同様に、お客様のワードローブやコーディネートに携わらせていただく中で1着1着の仕立てを大切にし、お客様の期待にお応えできる仕立てを実現するために洋服作りに向き合い、お客様の期待を超える服作りを目指して、今後もDORSOは尽力致します。

齋藤力

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