
"Why I ordered"
Why I orderedでは私が自分のために仕立てた洋服について、なぜこの生地を選んだのか、何を考えて仕立てたのか、完成した洋服の着想感はどうなのか、どんな着方をするのか、私なりの考えを記事にさせていただきます。
是非ご覧くださいませ。

私が自分用にオーダースーツ・オーダージャケット・オーダーコートを仕立てる際の生地選びは、世界中の生地屋さんが毎シーズン発表している新作コレクションの中から自分好みの生地を物色して、生地に触れながら仕立て上がりを想像し、自分が着たいと思える1着を楽しみながら選んでおります。
今回私が選んだPIACENZAの "ALASHAN TWILL"は、2025年の新作として発表されたコレクションです。
PIACENZA(ピアチェンツァ)はカシミヤやキャメルなどの高級獣毛の取り扱いが多く、糸となる原毛に対して徹底して拘り、それらの材料で織られた生地のクオリティーは非常に高く、実際に生地に触れてみると素材感の秀逸さから"ピアチェンツァらしさ"を感じることができる唯一無二のコレクションを展開している生地ブランドです。
"ALASHAN TWILL"は、「カシミヤの中のカシミヤ」と言われている最高品質のアラシャンカシミヤを100%使用した生地コレクションです。カシミヤ生地の多くは紡毛(ぼうもう)と呼ばれる表面を毛羽立たせた素材が多いのですが、こちらのアラシャンツイルは繊維を均一に揃えて糸にした滑らかで毛羽の少ない梳毛(そもう)を使用してツイル(綾織り)で仕上げたスーツ素材です。
梳毛糸のカシミヤのことをウーステッドスパンカシミヤ(通称 スパンカシミヤ)と呼び、数多くあるカシミヤ生地の中でもスパンカシミヤは最高峰のカシミヤとして位置付けされる特別な品質です。




アラシャンツイルのコレクションを手に取り、一枚一枚に触れ品質の素晴らしさと色柄の確認をしながら自分自身がどんな洋服を仕立てたいかを妄想して生地選びを楽しみました。

最終的に選んだのはネイビー無地。
前述したように、この素材はスーツ向けとして展開されているコレクションなのでスーツを仕立てるという選択肢もあったのですが、色と柄によってはジャケットとして着用するのに適していると判断して今回はネイビージャケットを仕立てることに決めました。
私は今までにネイビー無地のジャケットをブレザーを除いて4着仕立てて着てきた経験があるのですが、スパンカシミヤで自分用の洋服を仕立てるのは初めてなので、どのような仕上がりになるのか生地を見ながら想像をしてジャケットのデザインについて考えました。


このアラシャンツイルをサンプルで見ながらネイビージャケットを仕立てたいと思ったのには理由があります。
私がイタリアで洋服作りを学んでいた時の話なのですが、スーツ生地のような表情・仕上げのネイビー無地の生地でジャケットを仕立てられているお客様や職人さんを何度か拝見したことがあり、自分の中でその素材の印象や仕上がったネイビージャケットが鮮明に記憶に残っておりました。
当時20代前半だった私の記憶に刻まれた理由は、ネイビーのジャケットを仕立てるならジャケットらしい表情を持つ織り方や仕上げが施された生地の方がスーツ生地のような滑らかな質感の生地よりもジャケットらしい雰囲気に仕立て上がるのではないか?と内心不思議に思いながら見ていたからだと今は思います。
その後、今の仕事を通じてお会いしたことがある世界的に有名なネクタイブランドのオーナーさんやナポリの伝説的なサルト(仕立屋)の方々もツイルで織られた光沢感のある表情のネイビージャケットを自然に着こなされているお姿を拝見する機会が何度かあり、その着こなしは正にナチュラルさとエレガントさを併せ持った紳士の装いであり、私の憧れのスタイルへと徐々に変化していきました。
アラシャンツイルのネイビー無地を見ながら、それらの印象的な体験と若かりし頃の私の想いがリンクして記憶がよみがえった事と私自身が年を重ねてきたことで挑戦できる新たな装いをしたいと感じたことが今回の生地選びの決め手となりました。

スパンカシミヤのツイルのジャケットが完成致しました。
自分用の洋服を仕立てる際は、毎回パターン(型紙)を研究の為にフィッティング面やデザインに調整を加えた線を採用して設計しております。
今回は今までに着たことがない上質な素材を使用してベーシックなアイテムであるネイビージャケットを仕立てるということもあり、普段よりもリラックス感のあるフィッティングと雰囲気を狙って型紙を設計致しました。


今回はブレザーではないので、マットなイタリア製水牛ボタンを合わせました。

アラシャンツイルのネイビージャケットを早速着てみました。
人生初のスパンカシミヤの着心地は、私の期待を超える素晴らしさでした。
カシミヤ100%の梳毛糸の生地なので柔らかく伸縮性を感じる着心地を想定していたのですが、実際に着てみるとハリコシを感じることができるしっかりとした質感に驚きました。
極細のカシミヤ繊維をふんだんに使用してハリのある糸に仕上げ、その糸をツイルに織りあげることでカシミヤとは思えないほどのコシのある質感を得ているところが素晴らしいと感じました。
ここからはネイビージャケットを主役にしたコーディネートを幾つかご紹介させていただきますのでご覧くださいませ。

こちらのコーディネートは細幅のロンドンストライプのシャツにDORSOオリジナルネクタイのヘビーシルクサテンのレジメンタルをコーディネート、パンツはジャケットと光沢感の近いチャコールグレーを合わせてドレス感を強調しました。


こちらのコーディネートはIOLOとコラボで制作したモックネックニットのネイビーをインナーに、パンツはブリスベンモスのコットンで仕立てた少し黄色味の強いベージュを合わせました。
異素材であり異なる表情の素材同士ですが、ジャケットの質感が綺麗でまとまりのある装いを実現するために役立っております。



こちらのコーディネートは細幅のブラウンロンドンストライプのシャツにDORSOオリジナルネクタイのヘビーシルクサテンのレジメンタルを合わせました、パンツはネクタイの色味を拾ってモカブラウンを合わせて全体的に柔らかさと軽さを与えました。



DORSOのオリジナルデニムを使ったコーディネート。
光沢感のあるジャケットとデニムの合わせは素材同士が喧嘩してしまうのでコーディネートが難しいのですが、そこ敢えてチャレンジしてみました。
素材感や柄を計算したコーディネートではなく、無造作にサラッと羽織るだけの何気ない日常をイメージした"脱力コーディネート"も気が抜けていて良いかと思います。



こちらはIOLOとコラボで制作したモックネックニットのグレーをインナーにチーフはDORSOオリジナルのシャンブレーを挿し、パンツはニットの色に近いグレーのウールをコーディネートしました。
ネイビーとグレーの2色のみで構成したコーディネート、色を制限することでまとまりがあり落ち着いた印象にしやすいです。



こちらのコーディネートはグレーのシャツにDORSOオリジナルネクタイのヘビーシルクサテンのグレーソリッド
を合わせました、シャツとネクタイとパンツはグレートーンで統一させて色を絞りました。



今回はPIACENZAの "ALASHAN TWILL"で仕立てたネイビージャケットをご紹介させていただきました。
私自身のオーダー経験をご紹介することで、洋服をオーダーで仕立てることの魅力を伝え、オーダーの世界に対して興味を持っていただける方に素晴らしい体験をしていただきたいと思っております。
PIACENZAの新作 "ALASHAN TWILL"を店頭もしくはトランクショーで手に取ってご覧いただきながら、皆様にとって長年愛用することになるネイビージャケット探しをDORSOはお手伝いさせていただきます。
DORSOの仕立てやサンプルの下見、ご検討されている生地の下見も喜んで受けさせていただきますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡くださいませ。
*ジャカルタトランクショー
2025年12月5日(金)〜 12月7日(日)
*名古屋トランクショー
2026年1月17日(土)〜 1月19日(月)
*大阪トランクショー
2026年1月29日(木)〜 2月1日(日)
*福岡(博多)トランクショー
2026年2月13日(金)〜 2月15日(日)
*熊本トランクショー
2026年2月15日(日)〜 2月17日(火)
*広島トランクショー
2026年3月7日(土)〜 3月9日(月)