"Why I ordered"
Why I orderedでは私が自分のために仕立てた洋服について、なぜこの生地を選んだのか、何を考えて仕立てたのか、完成した洋服の着想感はどうなのか、どんな着方をするのか、私なりの考えを記事にさせていただきます。
是非ご覧くださいませ。
今回はDORSOのMTM(Made-to-measure/メイドトゥーメジャー)で仕立てたジャケットについてご紹介をさせていただきます。
選んだ生地はLORO PIANA社のSILK AIR、Wool 86% & Silk 10% & Cashmere 4%の秋冬向きの3者混、生地のウエイトは280gなので秋冬用としては軽い方ですが、少し起毛感がある質感なので季節感を味わいつつ軽く着ることができるLORO PIANA 社らしい日常使いにちょうど良いジャケット生地です。
ブラウンにグレーをミックスさせたような色味に惹かれて選んだグレンチェック、ブラウン系のジャケットはパンツやインナーとのコーディネートがしやすく、写真のようにカジュアルなタイドアップスタイルからインナーをニットで合わせたり・ボトムスにジーンズを合わせるようなカジュアルスタイルまで幅広く使えて重宝します。
今回のブログでは、私が自分用にMTMで仕立てたジャケットの"DORSO ハイクオリティーオプション"に焦点を当てて、ハイクオリティーオプションの目的と効果について触れていきます。
先ず"DORSO ハイクオリティーオプション"とは何かと言いますと、DORSOのMTMの仕立てにはDORSOの理想や拘り・ファクトリーの技術力が詰まっているのですが、通常の仕立てよりも更に拘り職人の技術を活かした高度な仕立てで一着を仕立てることを目的としている特別なラインのオプションとなります。
"DORSO ハイクオリティーオプション"をスタートしたキッカケは、実はお客様からのリクエストでした。
私がDORSOをスタートした当初はオプションの設定はしていなかったのですが、お客様との対話の中で洋服の仕立ての技術的な部分や私が仕立ての本質だと大切にしている部分についてお話をさせていただく機会が多く、MTMのシステムの中でもオプションとして高度な仕立て技術を体感したいとのお客様のお声が非常に多かった為に、DORSOとして提案したい職人の仕立て技術を活かしたオプションをご用意致しました。
ここからは、"DORSO ハイクオリティーオプション"をパートごとにご紹介させていただきます。
①肩イセ増量仕立て
肩のイセとは、前身頃と後ろ身頃を縫い合わせる時に前身頃の肩線の長さより後ろ身頃側を長くする分量の事をいいます。
前身頃の肩線の長さに合わせて、後ろ身頃を縮めて縫い合わせることで肩回りと背中に運動量を加えます。
DORSOの仕立てでは、通常のMTMでも着心地を良くするために必要なイセ量は十分に入れて仕立てているのですが、ハイクオリティーオプションではMTMで入れることができないイセ量を手縫い(しつけでの仮留め)によって細かく分散させてから本縫いをします。
この工程は専門の職人が手作業で行います、その結果として背中の運動量や肩回りの立体感を増した仕立てとなり快適な着心地を実現致します。
②袖イセ増量仕立て
袖のイセとは、身頃のアームホールと袖を縫い合わせる時に身頃のアームホールの寸法より袖のアームホールを長くする分量の事をいいます。
身頃のアームホールの長さに合わせて、袖を縮めて縫い合わせることで腕回りに運動量と立体感を加えます。
DORSOの袖付けは、通常のMTMでも綺麗な袖付けと快適な着心地を実現するために必要なイセ量は十分に入れて仕立てているのですが、ハイクオリティーオプションではMTMで入れることができないイセ量を手縫い(しつけでの仮留め)によって細かく分散させてから本縫いをします。
この工程は専門の職人が手作業で行います、その結果として着心地面で重要な腕回りの運動量や袖の立体感を増した仕立てを実現致します。
"袖のイセ = シャツ袖(マニカカミーチャ)"とイメージされている方が多いのですが、通常の袖付けでもイセを増やすことは可能であり効果的ですのでお客様のお好みと理想とされるイメージに合わせて、袖付けは通常の袖付け(割袖)とシャツ袖(マニカカミーチャ)の2種類からお選びいただけます。
こちらの写真はシャツ袖(マニカカミーチャ)で仕立てております。
横から見たシャツ袖(マニカカミーチャ)。
③本衿かけ仕立て
本衿かけとは、手縫いで上衿を付けていくことです。
通常の衿付けでも、身頃のネックと衿を縫い合わせる時に身頃のネックの寸法より衿を長くしてイセを入れて付けているのですが、更にイセを増やして長い衿を手縫いで付けることで首への吸い付き(衿ののぼり)を向上させて着心地の良さを実現致します。
首への収まりが良く、優しく首に吸い付く衿付け。
④ゴージーラインカーブ仕立て
ゴージーラインとは、身頃のラペルと上衿を縫い合わせている縫い目の線の名称です。
こちらは、③本衿かけを手縫いでする際にゴージーラインをカーブさせながら手縫いで仕上げる技術となります。
この技術はジャケットの顔のひとつと言える衿・ラペル・ゴージーラインに職人の手仕事を加えることで仕上がりの雰囲気を増すことを目的としています。
マシンでのゴージーラインの仕上げも綺麗なのですが、手縫いでしか表現ができないカーブがお好みの方にお薦めです。
④衿穴(フラワーホール)手かがり仕立て
ラペルに施す衿穴(フラワーホール)を手縫いで仕上げる技術です。
ゴージーラインカーブと同様に、仕上がりの雰囲気に違いが出る仕立て技術のひとつです。
手縫いでの仕上げはマシンと比べると立体感を増します、手縫いであることが最も分かりやすいディテールですので手縫いがお好みの方にはお薦めです。
ラペルのロールとフロントカーブ
ラペルから裾に向かって繋がる自然な曲線、ラペルのロールの美しさが通常のMTM仕立てでDORSOが拘っているパートです。
こちらは"DORSO ハイクオリティーオプション"とは関係がない通常仕立てですが、DORSOの仕立ての特徴のひとつです。
今回のジャケットでは、チェンジポケットを採用しました。
腰ポケットのデザインは、お好みのデザインからお選びいただけます。
②袖イセ増量仕立て と ④ゴージーラインカーブ仕立て
①肩イセ増量仕立て
④ゴージーラインカーブ仕立て と ④衿穴(フラワーホール)手かがり仕立て
④ゴージーラインカーブ仕立て
①肩イセ増量仕立て と ②袖イセ増量仕立て
①肩イセ増量仕立て と ③本衿かけ仕立て
"DORSO ハイクオリティーオプション"で仕立てた、衿・肩回り・袖の雰囲気。
"DORSO ハイクオリティーオプション"で仕立てたラペルの雰囲気。
今回は、LORO PIANA社のSILK AIRで仕立てたMTMジャケットの"DORSO ハイクオリティーオプション"ついて記事を書かせていただきました。
前述しておりますが、"DORSO ハイクオリティーオプション"はお客様との対話の中からスタートをさせていただいた仕立て技術となります。
通常のMTMに対しても一着一着に真剣に向き合って仕立てておりますので、今回ご紹介をした"DORSO ハイクオリティーオプション"はオーダーにとって必ず必要なわけではなく、あくまで通常仕立てに職人の手仕事を加える特別な仕立て技術となります。
技術的なことを文章にすることは、目に見えて分かる箇所と見ても分からない箇所が混在するために難しいのですが、少しでも仕立てについてお伝えできればと思い私なりに書かせていただきました。
店舗では"DORSO ハイクオリティーオプション"で仕立てた現物のジャケットもご覧いただけますので、ジャケットをご覧いただきながら仕立て技術の目的と効果についてご説明をさせていただく事も可能です。
ご興味をお持ちいただけましたら是非実物をご覧くださいませ。
DORSOを昨年スタートして、気がついいたらあっという間に1年が経っておりました。
今回ご紹介をした"DORSO ハイクオリティーオプション"のようにお客様からご指摘いただいたことで新たなチャレンジをさせていただく機会が多く、洋服を通してたくさんの方と出会い、お話をさせていただけていることに心から感謝しております。
今後もお客様との対話を大切にして、お客様の期待を超える服作りを目指してDORSOは尽力致します。
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2024年11月16(土)〜 11月18日(月)
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